欲しがります負けたって

ミュージカルと旅とたべもの

暗闇があなたを照らす

Jack the Ripper来日公演のシアタービューイング参加してきた。

桜花さんは絶対にお好きですよと言われてからずっとずっと観たかったJtRをやっと観れて、皆さんさすがよくご存知で…という感じでした、ね、うん。曲も演出も超好みだったー。千秋楽に観たのはある意味正解で、先週観ていたら間違いなく今日は神奈川にいた。

以下、自分用ついろぐまとめです。いつも通り支離滅裂。

シアタービューイングキャスト

ダニエル:Jun.K

ジャック:キム・ボムレ

アンダーソン:パク・ソンファン

モンロー:イ・ヒジョン

ポリー:ソ・ジヨン

グロリア:キム・ヨジン

…キャスト多すぎてびっくりしたwこれはいろんな組み合わせ観たくなってしまうだろうな。。

パンフにスクリプト全文が載ってるって、超便利!すばらしい!脚本じゃなくて翻訳字幕だから引っかからないのかな?元から規制が緩い作品なのかな?なんにせよ来日公演はこうでなくては!ありがたいよー

曲も歌詞も演出もとても好みだった。

というかOvertureからこれ好みだ!!と確信したw時計の逆回転とか血文字とかたまらない。

1幕時点の感想は「ダニエルが堕ちていくんだろうなという感じが楽しみで仕方ない」だった。殺人なんて絶対にできなさそうな彼の狂気が目覚めていく展開なんだろうなと。

1幕ラスト、出会ったから〜あたりの演出がほんと好みだ。階段の上にアンサンブルがずらっと揃ってるコーラスとか、ウィーン版の闇広とか韓国版の影を逃れてを彷彿とさせる不気味さ。

追い詰めるようなコーラスと重なっていく三重唱、でジャックの「久しぶりだな…」の盛り上がり。こういうの大好き。

てっきりジャックがダニエルを操作してるように見えたけど、お前の中にも俺と同じ狂気はあったんだよオチになると思っていたので、そもそもジャックが存在しないというオチにはびっくりした。

死への願望トートとかお前の中に潜む悪魔アマデとか僕はママの望む悪夢ゲイブとか大好きな私が 私が 好きじゃないわけないじゃないですか……

「俺はお前だ」展開も大好きだし、誰かの、もしくは多くの人の強過ぎる思いや望みや呪いがそこに本来存在しないはずのものを存在させる、というテーマも大好物なのでお腹いっぱいだった。たまらん。

綺麗に帰結していく演出が物凄く好み。「僕は犯人を知っています」への繋ぎ方は鳥肌が立った!

1幕で観た時はダニエルの憔悴した様子もアンダーソンの「俺はこの街が嫌いだ」の意味もわからなかったけど。

ラストで最初のアンダーソンに戻るところも、コカイン中毒の症状としか思ってなかった震えや報告書を燃やす意味がわかってぐっときた。

過去と現在の行き来や同じシーンの繰り返しってやりすぎると混乱したりくどく感じるけど、全然そんなこともなく。

相変らずアンサンブルのクオリティは高いし、光の演出が良いなー。キャバレーがきらきらしていても愛し合い幸せなときもどこか薄暗く陰気なロンドン。あの路地や石橋のビジュアル、さりげなく雨が降っている感じとか、すごくロンドンだなあと思った。

アンサンブルをコーラスはもちろん、歌わない通行人みたいな使い方を頻繁にしているのも面白かった。

レミゼでも思ったけど、韓国のアンサンブルは一人一人の声量がきっちりあるのに揃ってるのが凄い。外す人がいないんだろうな。みんな細いのに。あとダンスがすごく揃ってる。タイプのとことか亡霊のとことか、脚の角度にびっくりした〜。

ジャックとダニエルについて。

ボムレさんが良い声すぎる。なんだあの脳髄に直接響くような声は。圧倒的だった。

だからてっきりあの舞台の支配者なのだと信じ込んでしまった。

気に入ったぞ仲間だ、プレゼントを受け取れと言った生身のジャックと、ダニエルの深層心理が望むジャックを切り離して考えられないから混乱してる。もっと抽象的な存在として捉えるべきなのかな。

切り裂きジャックの「ジャック」はもともと殺人鬼の名前ではなく、犯人不明だったためつけられた抽象的な人間な名前だ、というのがすごくしっくりくる。ボムレさんのジャックは確かにジャックという名前の人間には見えなかった。

ボムレさんの歌声に本当に骨抜きにされてしまって、ずっと映像探している。。。うううまさかCDにボムレさんがいないなんて。(ボムレさんのモンローもそれはそれは素敵だったけど)

ビューイング映像そのまんまでいいからDVD化してくれ!

2幕冒頭のジャックとダニエルのやり取り。後ろからマントを羽織らせて全く同じ角度でばさっと翻して夜の街に消えていくところ。超 絶 好 み だ 。殺す娼婦を自分で選ばせるところなんて最高に悪趣味で素晴らしい。ぞくぞくした。

逡巡していたのに選んだ娼婦の手を取ったダニエルに「そうだ俺もその女がいいと思っていた」と声をかけるジャック、あれはそういう意味だったのか。殺した後にほっとしたように笑っているダニエル。

題材が題材なのでもっとグロいシーンを覚悟していたんだけど、新感線より全然えぐくない(笑)

2幕以降の殺人シーンが全て抽象的に描かれているのも、そういうことだったのね。こちらから連絡はしない、ジャックから訪ねて来る、必要な時に会うだけ。ダニエルが必要な時にだけジャックが現れるって、取調室の時点でもう言っていた。

そしてダニエルは結局、ジャックの殺人の現場は一度も見ていないんだな。グロリアの最期(だと思っていた火事)も見届けていない。つまり2幕からの殺人は全て彼独自の発想でやったわけで、そう考えると彼には素質もあったんじゃないかと思う。真っ直ぐ過ぎる気性や知識欲と表裏一体の狂気。

ダニエルがどこまでの狂人だったのかというのは判断が難しい。本当にただ愛のための行動だったのか、殺されてしまったらわからない。ダニエルの供述しか根拠が無いから、どこまでが真実かなんて誰にもわからない。

グロリアはもう治らないことを外科医の彼がわからなかったはずはないし、後半は本来の目的なんて消えた快楽殺人だったと思うんだけど。

すりるみの「全て私の語る彼に過ぎない」って解釈を思い出した。でもわざわざ犯人を知っていると言いに来たことからしても、グロリアを愛していたことは事実なんだろうな。素質はあったかもしれないけど、彼女を助けたいという強い気持ちが引き金となってジャックを生み出した。

僕は医者だ殺人なんかしない→諦めた、しかし彼が現れた→彼が希望をくれた、臓器をくれた。本物のジャックは臓器のために人を殺していたわけではないけど、ダニエルの中ではジャックは殺人魔ではなく臓器をくれる人としてインプットされてたんだろう、7年前に。

グロリアを不幸に陥れたジャックが、ダニエルの中で結局は希望の存在としてインプットされていたことにやはり狂気を感じる。僕のせいだ、僕が必ず助ける、もなんか…まっすぐなんだけど、思考回路が怖い。もともと違法で死体を買いに来る人だしな…。そもそも臓器のために殺人を犯すのも、墓を荒らして死体を連れて帰るのも、狂ってるレベルとしては大差ないような。

しかし最初から最後まで手段のためには何万ポンドもばら撒くダニエル、家にあんなとんでもない装置作っちゃうダニエル、あなた一体何者なのよ(・∀・)ってつっこんでしまったわ。臓器移植の権威とは言ってたけど外科医ってそんなに儲かるの?

あと医者として摘出した臓器を鞄に直入れで持ち帰るのはどうなの??笑

そんなに何人も殺して臓器を保管して、どんどん悪化していくグロリアをどうにかできると思っていたのかな、やっぱり快楽殺人だったところもあるのかな、とか考えてしまうけど、狂人の精神分析をしても意味ないな。

供述もよく考えればちぐはぐだし、ダニエルが正気を保てるのはグロリアといる時だけで、でもグロリアが狂気の原因でもある。グロリアの苦しみを知って殺人をやめようと決意するし、グロリアが生きている限りは衝動を止められずポリーを殺す。

この殺人劇を終わらせたい、自分の犠牲も覚悟していると言いつつ完全に足がつく状況でポリーも殺す、ジャックが来なかったからだと責める。完全に正気を失っているけれど深層心理では誰かに見つかって解放されたがっているように見える。

うーん、ジキルとハイドみたい。

Junさんのダニエルは健闘していたと思うんだけど、唯一残念だったのはジャックのボムレさんと歌と演技の実力差がありすぎたことだな…心理的に入れ替わるところとか、あれは力が拮抗する2人が向かい合うからこそ活きる演出だと思うのに。ジャックが強すぎてダニエルがのまれちゃってたなあ。

Junさんといえばシアタービューイングの映像は完全に彼のファンをターゲットに絞っていて、劇場入り〜楽屋紹介、終演後にはこれからも応援してね♡メッセージまであってちょっと笑ってしまった。世界観とは…!

道理でなんかピンのアップが多いと思ったよ…!笑

韓国はよくアイドルをミュージカルに出演させてるけど、上手いこと合う役を見つけてくるよなあと毎度感心するわ。ダニエルは確かにアイドルの明るい天真爛漫さと色気やダークさという対極の魅力を引き出すのに適した役だ。

アンダーソンについて。

すごく良かった。俺はこの街が嫌いだ、の理由が2幕で明らかになっていく。

きっとJtRは彼の物語なんだろう。ずっとダニエルの目線で進んでいくように見えるけど、最初から最後まで事件を俯瞰で見ているのはマスコミのモンローですらなく、アンダーソンなんだな。

中毒症状もあって言動がおかしい時もあるのに、実はあの面々の中で一番正気を保っているのが彼だ。

ストーリー的にアンダーソンとポリーの過去を掘り下げ過ぎていないのもいい。彼にも戻りたいと思える過去があった、何も聞かずになんでもお願いを聞くわと言ってくれる女性がいる、それだけで結末が悲哀に満ちている。

ほんと間が悪くてもう!あほか!そこは引き止めろよ!ていうか囮で真っ先にポリーのこと思い浮かべるところがクズ!あほ!すき!ってなる…あなたはどうしてそうなってしまったの、ポリーとはなんで別れたの…というのが想像に委ねられているのがいい。

研究室で彼ら心中するんだとばかり思っていたのであのラストも意外だったし、ひとり残されても禁断症状が出ても正気を失えないアンダーソンというのがすごく彼らしくて、最高にかわいそうで、良かった。

「何のために俺はお前を捕まえる?」の理由は、ただジャックが殺人魔だから、そして狂いゆく都市の名前のない殺人魔(=市民)を止めたいから。彼が真っ当な、むしろ正義感のある人間だったんだなと思えるし、結果的に殺人の美談を残さないという目的だけは遂行できた。

モンローは、本当に救いようのない下衆で良いな。最後まで同情の余地がない。

でもどこか憎めないし、本物の悪役にもなり得ない。金とゴシップに目がなく目的のためならプライドも捨ててなんでもする、差こそあれど彼は市民の欲の権化でしかないからだ。レミゼのテナルディエみたいだな。

自分が刺されてもまだギャラの交渉してるし、いざ死ぬとなっても全額やるとは言わない(笑)こういう人は転んでもタダじゃ起きないしきっと永遠に反省しないから殺しておいて正解だよ。

でも彼は鏡に過ぎない。市民は誰もが顔のないもうひとりの殺人魔。(というメッセージもすごく好みだった…笑)

ポリーとグロリアについて

ポリーは1幕でそこまでしっかり見れなくて後悔。もっとアンダーソンとのひとつひとつのやり取りを!機敏を!読み取りたかったああ。

ポリーがジャックに消えて欲しいと言う理由は「客を取りたいから」確かに殺人魔が潜んでいるかもしれない状態で客を選ぶのはリスクが高い。それを聞いてアンダーソンは無視するけど、ポリーは本当はアンダーソンの力になりたいだけなんだよねえ…切ない。

グロリア(Gloria)って、祈祷とか、栄光の賛歌って意味だよね。ダニエルにとっての光は、グロリアにとっては絶望を増すだけだった希望。手紙をもらって足をぱたぱたしてるのが本当にかわいい。もう会いたくないと言いながら7年間手放せなかった手紙。

あるいはのデュエットはディズニープリンセス物のデュエットみたいで、きらきらしている。綺麗。

ちょっと切り裂きジャック事件について調べてみたんだけども、

「5人目の被害者メアリー(25)は道徳的に見た際最も残忍な殺され方をしているが、医学的な見地に立てば最も高度に外科的な殺され方即ち最も精確な技術の臓器摘出が行われており、医者の犯行の可能性が指摘されている」とあった。

ちなみにポリーPollyはMaryの愛称なので、ここは史実に沿わせてあるんだな。

グロリアもポリーも、2人とも娼婦であることは変わりないけど、作品内での扱いが全然違っていて面白い。

外科医と検察官という娼婦より真っ当に見える職業の男達の方がよほど心が弱く壊れやすいところも。

市民がゴシップを楽しむのも、たぶん火事の時に救出を(結局助かるくらいのものだったのに)すぐに諦めるのも、被害者が娼婦だから。他人事だから。凄惨な殺人劇も外科医の悲劇に仕立てたら同情が買えるくらい、彼女達の命は安い。その安い安い命を掻き集めて、ダニエルは同じ娼婦であるグロリアの命を繋ごうとする。

通りすがりの怪我人を治して治療費まで恵むくらい心が綺麗で、医者は人間を殺せないと言っていたダニエルも、結局のところ命の重みには差があると思っているし、その理由は愛ひとつで十分なんだ。

職業も関係ないという点で、市民よりむしろ清らかなのかもしれない。